変貌する中東に長年住み付いて活躍している日本人に焦点を当て、中東で日本や日本人、日本企業がどう受け止められているかを述べた。今後、日本や日本企業が取るべき対応など、彼ら自身の仕事や経験にも触れつつ紹介した。 海外で仕事をしようとする人にも参考になる話題も拾った。
第1章 中東湾岸七カ国で磨いた包丁人生………… 高橋智寿氏 第2章 和の心を伝えるホテル・ウーマン……………伊勢本ゆかりさん 第3章 クウェートで改宗したオイルマン ……………柳田行範氏 第4章 湾岸歴35年超の転籍バンカー………………木下宇一郎氏 第5章 中東情報の発信を続ける伝道師…………… 前田高行氏 第6章 自他ともに認めるミスター・リビア ………… 新居 哲氏 第7章 年間20万マイルを飛ぶ商社マン ………… 高梨 修氏 第8章 ドバイ・ブランドを浸透させたパイオニア…… 槙島 公さん
本書では、次のような八人の日本人にご出馬願った。いずれも平素から中東湾岸をウロウロする筆者が、何らかの形でお世話になった方々ばかりである。 第1章では、ドバイの日本食レストランで腕を振るう高橋智寿氏を取り上げた。合計三十年にも及ぼうとの中東湾岸七ヶ国での生活を経験した同氏だけに、お料理と同じようになかなか味わいのあるシェフである。 第2章では、同じドバイのホテルで働くバリバリのホテル・ウーマンの伊勢本ゆかりさんにご登場願った。ほとんど石油の出ない小王国ヨルダンのホテル勤務を経て来ただけに、ワンダーランド・ドバイを見る目は肥えている。 第3章では、オイルマンの柳田行範氏を取り上げている。湾岸戦争の発端となったクウェートで厳しい日々を過ごしてきた同氏だが、その結果、彼らともっと分かりあいたいとイスラム教徒になったのだから本物である。 第4章では、石油大国サウジアラビアと付き合って三十年の保険と商社マン育ちの異色のバンカー木下宇一郎氏を紹介している。イスラム金融にも詳しい木下氏だが、今でも何か遣り残しを感じているという。 第5章では、同じサウジラビアに在勤した研究者肌のオイルマン前田高行氏にご登場いただいた。彼の地の勤務時から欧米色の濃い中東湾岸報道に疑問を覚えていただけに、舞い戻った東京から中東湾岸の実像の紹介に努めている。 第6章では、中東湾岸と言っても北アフリカのリビアに惚れた鉄鋼マンの新居哲氏に焦点を当てた。米国と対決していた同国で製鉄所を建設した苦労話はいつ聞いても感心させられる。新居氏が説明するリビア人の素朴さも意外だ。 第7章では、ドバイからアフリカ・中東湾岸全域をカバーする中堅商社マンの高梨修氏を取り上げた。サービス・プロバイダーを自任し、売り込みに奔走する高梨氏が肝に銘じているのは若い頃のスーダンでの大失敗である。 第8章では、ドバイで悠々自適の生活を送りながらコーディネーターを務める槙島公さんを取り上げた。バハレーンを振り出しに文字通り空を飛びまわっていたが、その後はドバイ・ブランドの売り込みに明け暮れた事情通である。 本書では、こうした八人が中東湾岸の国々で経験した話を通して、それぞれの国や地域の素顔を紹介している。八人の方々やそれぞれのエピソードについては、皆さんのお話にできる限り忠実に紹介したつもりである。万が一にも勘違いや誤りなどがあるとすれば、いずれも筆者の理解不足によるものであることをお断りしておきたい。 なお、本書では基本的に八人の方々のお話を中心に中東湾岸の諸事情を説明しているが、章ごとに「地域メモ」として、当該国などの説明を適宜付け加えている。読者諸氏の参考になれば幸いである。 最後に、仮に、本書が読者諸氏の中東湾岸に対する関心を喚起し、理解を深める役に立ったとすれば、それは八人の方々の現地でのご苦労によるものである。この場をお借りして、今回の執筆に当たって、個別のインタビューをお引き受けいただいた八人の方々に改めてお礼を申し上げたい。 二〇〇九年十一月 畑中 美樹
慶応義塾大学卒業後、中東経済研究センター、国際経済研究所などを経て、現在、ジェイ・エル・エナジー代表取締役。中東や北アフリカ諸国の王族、政治家ビジネスマンに知己が多く、中東全域に豊富な人的ネットワークを持っている。
Copyright © 2007 Doyukan. All Rights Reserved.