「診断士の独立開業日記」vol.5
『“道産子的”マイペース開業日記』

秋田舞美(中小企業診断士)

さて、「お仕事」=「価値を提供する」ことだと、ようやく学び始めた私。ただ、それがわかったからと言って……。どうすればできるの!?

右も左もわからぬままでの見切り発車。第一の壁は、当然ながら「実力不足」。ただ、診断士の基本であり、基盤となるコンサルティングに関しては、「できない=相談にいらっしゃる方もいない」ことが功を奏し(?)、被害は最小限で済みました。

秋田舞美(中小企業診断士)そんな私が、自分の実力不足をもっとも痛感したのは、講師業でした。たとえば、アンケート等で「説明がヘタ」とか「何を言いたいのかわからない」といった正直な評価をいただく中、いちばん効いたのが「みんな、こうだからね」という事務局の方の慰め。優しい言葉をありがとうございました(笑)。

理論は、ある程度わかっている。けれど、ほとんどの場合、人生・経営の先輩の方々にお話をするわけです。それも、経営について。説得力をもって伝えられる経験というものが、私には圧倒的に欠けていました。

苦手分野ならまだしも、社内プレゼンが学生上がりの同期の中ではそこそこできた程度で高くなっていた鼻っ柱は、ポッキリ。そして、「100回行って、1度でも評判を落とせば次回はない」プロの世界に、何も考えず、今思えば準備不足の状態で臨み、多数の受講者の貴重な時間をムダにした浅慮を恥じ入るばかり……。

でも、後悔ばかりもしていられません!対策として私はまず、アナウンススクールに通いました。重要なのは、話すマナーでなく中身だということは重々承知していましたが、場を創ることを含め、人前で話すことから改めて学びたいと思ったのです。
たとえば、私が自分の「しゃべり」について感じたのは、基本中の基本。

  • ・起承転結を考える。特に、何を話したいのか。「結」に向かって話す。
  • ・ヘタに笑わせようとしない(“聞いてくれないかも”恐怖症から、笑いをとろうとする=媚びる。けれど、誰も漫才を聞きに来ているわけではない)

そして、根本的な改善策は、企業について肌で感じること。つまり、私たちの本業です。幸いなことに、行政関連の中小企業支援機関で、自分の担当企業も持たせていただけるようになり、実際の企業に触れていくうちに、講師業のほうでも、しっかりと地に足のついた表現が、口から自然と飛び出してくるから不思議です。

さらに、「これができるから」というより、「これしかできないから」という理由から、「新分野進出」、「戦略的な情報発信」という自分の専門分野が決まってきました。ここにも、通常業務に加え、「話す」ということと改めて向き合った経験が活きています。こうして、ようやく「専門化難民」から脱出できたことは、私にとって非常に大きかった。

自分が何をすればよいか、何ができるのかわからない「専門化難民」。実は、すでに独立されている方にも、結構いらっしゃるのではないでしょうか? 「何でもできます」という看板は、「強い専門分野はありません」という看板に同じなのです。

さて、そんなお話に入ったところで、次回は最終回。お仕事の苦労(仕事GET編)です。どうぞ最後までお付き合いください!



中小企業診断士 秋田舞美 プロフィール

秋田舞美
  • 1978年 札幌生まれ
  • 2001年 東証1部上場の化学メーカーに就職(審査グループ)
  • 2005年 中小企業診断士登録(登録番号:402913)
  • 2007年 秋田診断士事務所開業

※2006年より、(独)中小企業基盤整備機構 北海道支部 新連携担当としても活動(現職:アシスタントマネージャー)

得意分野 ・新規市場進出・戦略的な情報発信・公的施策への対応等
得意業種 ・製造業・営業、啓蒙活動と必要とするサービス等