「診断士の独立開業日記」vol.4
『“道産子的”マイペース開業日記』

秋田舞美(中小企業診断士)

突然ですが皆さん、「仕事」って何だと思いますか? つまり、「対価を得られる行為」って、どんなことでしょう?

私は開業当初、「仕事」って何なのか、これがわかっていませんでした。たとえば初期の頃、申請書を作成したものの、無料奉仕だと思っていて、忘れた頃に、「申請書の件、請求してくださ〜い」と企業のほうから催促されて、ビックリなんてことも……。それまでも、相談は無償でお受けしていたので、「仕事」だとは思っていなかったのです。

ちなみに診断士の場合、「経営相談」と「飲みながらのグチに対するガス抜き」の区別が難しい場合も! 既知の企業であれば、会議室での4時間より、居酒屋での2時間のほうが濃密だったりもします(私の場合、ツールは「飲み」ですが、これは各人さまざまですよね(笑))。

では、改めて「仕事」って何なのか? 開業して約3年、ようやく気づき始めたこと――それは、自分が提供している製品・サービスに対して、企業が対価に見合う価値を感じてくれて初めて、私の行為は「仕事」になるのです!……おい、本当に診断士か!? と突っ込みが入りそうな台詞なのは、百も承知しています^^;でも、私はそれに気づくまでに、約3年の歳月を要してしまいました。

私は今、顧問先を1つも持っていません。これから独立しようとされている方にも、「えっ、それは厳しいですね」と、よく言われます。ただ、卑屈な意味ではなく、「私に何ができますか?」――私にとっては、まずそれありきなのです。

もちろん、「顧問先を持つな」という意味ではありません。「企業が支払う対価に値する行為を自分は行えるのか?」を問い質してみることが必要です。顧問料が月額10万円だとしても、年間で120万円。一方で企業の視点に立ったあなたは、たとえ月額3,000円だとしても、あなた自身と契約するでしょうか。もし企業があなたに1円でも支払っていれば、何の結果も残せなかった際に不満が生じるということを覚えておいていただきたいのです。

私の場合、専門・経験を鑑み、今は積極的に顧問先を持つ時期ではない、と判断しています。つまり、成果に対する報酬はいただきますが、相談は無料だと思えば気軽に電話もでき、契約終了もありません。そして、何らかの具体的成果に対する報酬として支払う分に関しては、大きな金額でも案外、すんなり納得していただけるのです。とは言え、事情はそれぞれ違いますよね。たとえば、月次定型業務がある場合やメンテナンスを要する場合は、顧問という形態も適しているのかな、と思っています。

今回の私にとっての“金言”。「顧客である企業に、対価に見合う価値を感じていただいて初めて『仕事』となる」ということ。当たり前のひと言ですが、開業して3年後に、ようやく気づいたひと言でした。

秋田舞美(中小企業診断士)



中小企業診断士 秋田舞美 プロフィール

秋田舞美
  • 1978年 札幌生まれ
  • 2001年 東証1部上場の化学メーカーに就職(審査グループ)
  • 2005年 中小企業診断士登録(登録番号:402913)
  • 2007年 秋田診断士事務所開業

※2006年より、(独)中小企業基盤整備機構 北海道支部 新連携担当としても活動(現職:アシスタントマネージャー)

得意分野 ・新規市場進出・戦略的な情報発信・公的施策への対応等
得意業種 ・製造業・営業、啓蒙活動と必要とするサービス等