第13回「502教室のコラム」

及川勝永(中小企業診断士)

診断士資格を知らない人に、診断士というキャリアの選択を説明するのは、なかなか難しいものです。診断士を目指した動機と受験、そして、診断士として仕事をすることなどを、どうやったら説明できるのか、何かわかりやすい例がないかと思いをめぐらせていたとき、テレビで新卒大学生の就職難のニュースが流れていました。

 「どんな仕事をしたいのか、あまり考えていませんでした…」という学生のコメントに、「たしかに自分も、やりたいことを明確に持っていたかと言えば、あまりそうでもなかったなぁ。大学で勉強したかったことも、ボヤッとしていたし…」?そう考えているうちに、診断士というキャリアの選択を、大学受験や就職活動と結びつけて説明できそうなことに気づきました。

<大学と診断士の受験動機>

大学を受験するとき、医学部や薬学部など専門性の高い学部は別として、多くの方は、「まずは将来のために、大学で4年間、勉強しておこう」といった理由で進学を決めたのではないでしょうか? もちろん人生において、大学進学は必須ではありませんが、「将来のためにさらに一歩、進んだ教育を受ける」という動機で大学に入る人もいるわけです。診断士資格も同様で、明確に目的を持っている人ばかりでなく、ビジネスでのワンランク上のステージを目指して受験する人もたくさんいます。

<卒業後の進路選択>

大学も3年生の後半になると、自身の進路を決める時期になります。「大学は出たものの、自分はどんな仕事をしたいのだろうか?」、「自分のやりたいことは何だろう?」といったことを、真剣に考えなければなりません。

診断士が他の資格と大きく異なるのは、独占業務がないことです。会社員という“肩書き”はあっても、会社員という“仕事”がないのと同様、診断士という“肩書き”はあっても、診断士という“仕事”はありません。だから、診断士として何をするかは自分で考えるしかないわけで、学生と同様、合格後の進路に悩むことになります。

<リクルート活動>

おおよその進路が決まったら、今度は実際の就職活動が待っています。学生はこれまで、社会人というものを「みて」はきたものの、実際にどんな仕事をしているかを想像するのは、なかなか難しいものです。だからこそ、リクルーターやOB訪問を通してさまざまな社会人の話を聞き、その過程でしっくりいく仕事や会社をみつけて、入社試験や面接を受けていくことになります。診断士のキャリア形成にも、このプロセスはピタリとあてはまるようです。  私たちは、社会人経験はあるとはいえ、診断士の仕事は実際にみたことがありません。であれば、最初にすべきことは、診断士からさまざまな話を聞いてみることでしょう。実際に話を聞いて得られる情報は、自分の想像やネット上に書かれている話より、具体的でリアルなものです。

<インターンシップ>

話を聞いて興味を持てる分野がみつかったら、次は実際に体験してみることではないでしょうか。就職活動で言う「インターンシップ」にあたるのが、「先輩診断士の仕事を手伝ってみること」です。最初はタダ働きかもしれませんが、後悔することのないよう、一度は体験してみることが大切です。

<就職活動は人とのかかわり>

では、情報収集や仕事を手伝うための診断士のネットワークをつくるには、どうしたらいいのでしょうか。おそらく、もっとも手っ取り早いのは、診断協会に入会し、その中にある研究会に入ることでしょう。そうすれば、多くの診断士の方に会うことができます。そこで親しくなった先輩診断士に仕事の話を聞いたり、仕事を手伝わせてもらったりすることは、可能なはずです(もちろん、本人の努力は必要ですよ!)。

<失敗するケース>

診断士のキャリア選択で失敗するケースとして考えられるのは、「合格後に自分のやりたいことを考えていない」、「コミュニケーション不足で情報収集ができていない」、「自分の選んだ業務分野が自分の適性と合わなかった」などが考えられます。ただ、これらの失敗はいずれも、前述のプロセスを経ることで回避可能です。

診断士としてのキャリア選択は、人生2度目の職業選択の機会だと考えて、ぜひもう1度、“就活”にチャレンジしてみてください。

診断士受験 502教室