第12回「502教室のコラム」

金 世永(中小企業診断士)

診断士 日常生活には、さまざまな情報があふれています。インターネットが普及し、PCや携帯電話などの情報機器が日進月歩で高機能化する中、われわれのライフスタイルはずいぶんと変化してきたと感じることが増えてきました。

たとえば、以前は買い物へ行くにしても、ご飯を食べるにしても、自宅から一歩出ないとできなかったことが、いまではその多くが自宅のPC画面の前でできてしまいます。まさに、「ライフスタイルの変化」です。

それでも、仕事をするにはそうもいかず、出社しないと仕事ができないといったことも数年前までは当たり前でしたが、ITインフラが整った現在では、ワークスタイルまでもが変化しようとしています。実際に、最近ではいくつかの上場企業で、ITツールや情報インフラを活用して、自宅でも仕事ができる環境を整え、多様な就業機会を提供する、いわゆる在宅勤務制度を導入する動きもあります。こうした流れは、今後もますます広がると思われ、「ワークスタイルの変化」による、新たなライフスタイルの変化も期待されています。

さまざまな商品やサービスが誕生し、普及することで、より便利な社会がやってくる。これは、とても楽しみですね。でもこうした動きは、必ずしも万人にプラスだとはいえません。

先ほどの在宅勤務制度を例に挙げると、在宅勤務が可能になることで就業スタイルがより自由となる方々、たとえばプログラマーや、子育て世代の女性社員などにとってはプラスとなりますが、それによって広いオフィスが必要なくなるため、都市部のオフィス不動産を扱う業者にとってみればマイナスかもしれません。また、在宅勤務となった方々の自宅近くの飲食店は新たなお客様が増加する可能性がありますが、その会社のオフィス近くのコンビニはお客様が減ってしまう恐れがあります。

このようなワークスタイルは、まだ一部の業種・職種においてのみ適用されていますが、今後ますます情報インフラが整備され、新たなサービスが出現すれば、こうした働き方が一般的になるかもしれませんし、広く普及するまでにそれほど時間を要さないでしょう。現に最近、都市部のファストフード店や喫茶店では、多くのビジネスパーソンがPCを用いて作業しており、電源が使える席は常に埋まっている光景をよく目にします。

こうした社会環境の変化は、われわれの生活にもさまざまなインパクトを与えることになります。診断士用語を用いていえば、SWOT分析でいうところの「外部環境の変化」です。その変化が当該企業にとって機会なのか脅威なのかは、その企業が行う事業内容や企業が有する経営資源によって異なりますが、いずれにせよ、環境が経営に与える影響がとても重要であることには変わりありません。しかも、それらの変化が突然やってくることだってあり得ます。飲食店の隣近所にコンビニができたり、ベンチャー企業が始めた革新的なサービスを、大企業がすぐにキャッチアップして同様もしくはそれ以上のサービスを始めたり…。いつ何が起こるかわからないのも、経営の特徴の1つです。

SWOT分析でいう外部環境は、「(企業が)統制不可能な環境」を指していますが、それに対して内部環境は、企業自らが統制可能なものを指します。そのため、経営資源と同義とされていますが、診断士受験生の皆さんにとって「学習環境」は、「統制可能」と「統制不可能」のどちらに該当するでしょうか。

ここでの答えは、「その受験生によって異なる」が正解ですが、1ついえるのは、学習環境は、意思と努力、創意工夫でいくらでも変えられるということです。いまやITツールの活用で、通勤時間を学習時間に変えることだってお手のもの。ランニングをしながら情報収集することだって、簡単にできてしまいます。受験生の皆さんにとって、情報化がもたらすインパクトは確実にプラスですよね。

受験勉強に少し行き詰まっている皆さん、学習時間が足りないと焦る前に、一度自らの学習環境について客観的に振り返ってみましょう。自らをSWOTし、自らの学習戦略を考えてみるのです。そしていいアイデアが浮かんだら、すぐ行動。試験直前で、いままでのやり方すべてを否定し、変えてしまうことには賛成しませんが、もしかしたらちょっとした工夫で学習効率が増し、合格が近づくかもしれません。

自らの意思で変えられる環境は、たくさんあるはずです。「診断士試験、恐るるに足らず」です。

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