第7回「502教室のコラム」

及川 勝永(中小企業診断士)

皆さん、こんにちは。502教室管理人の及川です。

【診断士の学習=「ポータブルナレッジ」】

先日、ある方から、「コンサルタントとして独立すること以外で、診断士の学習によるメリットにはどのようなものがあるのでしょうか? 私は今のところ、独立する気はないのですが…」と尋ねられました。真っ先に出てきた私の答えは、「診断士の学習は、企業内でも役に立ちます。その1つが、どんな仕事をするときでも役に立つ、ビジネスパーソンとして必要な『ポータブルナレッジ』を得られることではないでしょうか」というものでした。

 診断士を知らない人が初めてその資格の名前を聞き、それが「国家資格」であると聞くと、公認会計士や税理士、司法書士などと同様に、特定の分野でずば抜けた深い知識を有している専門家のように感じることがあると思います。でも実は、診断士の資格はそれらの資格とは異なり、取得の際に特定分野の深掘りでなく、企業経営に関する幅広い知識を学習するのが特徴です。これは、診断士が中小企業の社長さんに対して直接コンサルティングを行うケースが多いことから、社長と対等に話ができるだけの幅広い知識を求められるためです。

 では、経営に関する幅広い知識を身につけると、私たちにはどのような変化が起きるのでしょうか? 診断士の学習をひと通り終えたときの私自身の感想は、「よくもこんなビジネスの基本的なことも知らずに、今まで仕事をしてこれたよなぁ」というものでした(笑)。

 たとえば先日、ある経理担当の方が言っていた、「経費の削減、削減って誰もが言ってるけど、原価に関係する経費なのか、販管費の経費なのかを意識せずに使っている人が多い」という不満も、昔の自分ではその意味がまったくわからなかったでしょう。新聞やテレビのニュースで流れる「サプライチェーンの最適化」や「ゼロ金利政策」といった言葉も、なんとなく意味はわかるものの、「正確に説明して」と言われると、なかなか難しいものでした。ビジネスを行ううえでの土台となる幅広い正確な知識を得られることが、1つ目の大きなメリットだと思います。

 そして、診断士の学習を通じてもう1つみえてくるのが、会社内の他部署の仕事内容です。私にとって、営業部や製造部門といった部署は、仕事内容やミッションが比較的想像しやすいのですが、総務部や人事部、経理部、経営企画部といった部署は、仕事内容をイメージしにくいものでした。しかし、診断士の学習をすることで、これらの部署のミッションを体系的に理解できるようになってきます。そしてさらには、「今の会社の問題を解決するには、製造部の取組みを変えるだけでなく、人事面やITシステムの変革もあわせて行う必要があるのではないか」といった、複合的な視点から自社をみつめることができるようになるのです。

 別の言い方をすれば、一社員の視点でなく、経営者の幅広い視点。部分最適でなく、全体最適の視点で仕事をみつめることができるようになるということです。もしもあなたが上司から、「広い視野を持て」と言われているのであれば、まさにその達成方法が診断士の学習なのです。

 では改めて、診断士の学習にはどのようなメリットがあるのか。それは、ビジネスパーソンとしてのポータブルナレッジを獲得できることではないかと思うのです。ポータブルナレッジとは、その名のとおり、「業界や職種を超えて持ち運びができる知識」です。

 診断士として企業の診断を行う場合、特に業界や業種が限定されることはありません。自分が経験したことのない業界や業種に対しても、ひと通りのアドバイスを行うことは可能です。これは、業界や業種にかかわらず、普遍的に活用できる知識体系とコンサルティングのフレームワークを持っているからこそ、実現できることなのです。ポータブルナレッジを得ることは、今の世の中、きっとあなたの役に立つはずです。

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