第9回「502教室のコラム」

金 世永(中小企業診断士)

文章表現 皆さん、こんにちは。今回は、診断士2次試験攻略の重要な要素の1つでもある、文章表現について触れてみたいと思います。

ビジネスにおいて、人と人が対面で行うコミュニケーションは基本中の基本と言えますが、それに負けず劣らず、文章を通じてのコミュニケーションも重要です。クライアントとの間で行われるメールでの意思疎通に始まり、社内での企画書や提案書、社外向けの調査レポートやWebサイトでの情報発信など、文章にはさまざまなスタイルが存在します。

私はここ最近、コンサルティングに関連してさまざまな文章を作成する仕事を行っています。市場調査に関する報告書だったり、クライアントに提出するコンサルティングレポートだったり、その範囲も内容もバラバラです。もちろん、その合間には、クライアントやビジネスパートナーとの間で交わされるメールでの日常的なやりとりも文章で行われるのですが、いずれにおいても、文章作成時には細かい点まで気を配るようにしています。

当然ですが、同じ文章でも、求められる体裁はそれぞれまったく異なります。ある調査案件があり、その報告書を作成する仕事が複数あったとしても、依頼元が違えば、その調査の目的から調査範囲、要望されているポイントは異なるため、報告書の内容はまったく別のものになるのです。結論のみならず、全体の構成、目次の設計から内容の展開に至るまで、1つとして同じものはありません。そのため、文章を作成する際には、常にゼロの状態から、その構成を考えて作成することになります。

私は、文章作成が得意なほうだとは思っていませんが、目的については常に、しっかりと認識しているつもりです。その目的はただ1つ、書き手が伝えようとしている思考を読み手に正しく伝えることですが、これは文章であっても、対面でのコミュニケーションであっても、まったく同じでしょう。

コミュニケーションと言えば、メラビアンの法則というものがあります。言葉そのものが持つ意味よりも、話し手の表情や表現、ボディランゲージや声のトーンといった非言語コミュニケーションが、より大きな影響を持つことを提唱した法則として有名ですが、私は文章を通じたコミュニケーションの場面でも、表情や表現が大切だと思っています。そう、文章での意思疎通にも、表情は存在するのです。

対面でのコミュニケーションであれば、お互いが確認し合うことで、すぐに修正や変更ができますが、文章では簡単にはできません。そのため、私自身はできるだけ、対面でのコミュニケーションを重視していますが、さまざまな制約から、文章でのコミュニケーションを図らざるを得ない場面も多々あります。そんなとき、果たしてどんな表情で書いているか、どんな思いで伝えようとしているか。それらは、しっかりと文章で示されることになるのです。

先日、私が自宅のリビングで仕事をしていたときのこと。妻は隣でテレビをみていたのですが、突然、真剣に仕事をする私をみながら笑い出しました。いったい何があったのかと聞いてみると、ノートパソコンに向かって仕事をする私の表情が、何とも険しくておかしかったとのことでした。

その指摘を受けて私は、ハッとしました。そのとき、私が書いていた文章は、たしかに表情に出てしまったような険しい内容だったのです。なるほど、文章にもしっかりと表情があり、それは読み手にも伝わるのだな、と改めて思い知らされたのでした。

診断士2次試験は、限られた文字数で思いをしっかり伝えなければなりません。大切なことは、皆さんが伝えようとしている思いが、文章にどう反映されているかということです。自分の思い入れだけでは、読み手に伝わりやすい文章になっていない可能性もあります。書いてみた文章を、できるだけ多くの方に読んでいただき、読み手にどう伝わっているか聞いてみることをおすすめします。ときには自らが読み手となり、ほかの方の文章をたくさん読んでみること。その積み重ねが、文章における表現力向上につながるのだと思います。

診断士受験 502教室