第4回「502教室のコラム」

及川勝永(中小企業診断士)

皆さん、こんにちは。502教室管理人の及川です。

今回は、そもそも診断士試験とは何かについて、考えてみたいと思います。

【差別化が必要な試験ではない】

勝つためには、努力をしなければいけない――このことを疑う人は、いないでしょう。けれど、努力の仕方を間違ってしまうと、せっかくの苦労が結果につながらないことも、忘れてはいけません。たとえば、オリンピックのシンクロナイズドスイミングでも、三つ星レストランが腕を競う料理コンテストでも、勝つためには、ライバルといかに差別化をしていくかを考え、努力していかなければなりません。

診断士試験も、合否がはっきりする勝負の世界です。ましてや、ストレートでの合格率が4%しかない試験ですから、どうやってその4%に入るかを必死に考えてから勉強を始めるはずです。では、実際にどんな努力をしていけばいいのでしょうか。

「最新の知識を活用したアドバイスを考えられるようにしよう」、「自分の経験から得た実践知識を答案に活かして差別化していこう」、「他人が押さえていないこのポイントを深掘りして自分の得点源にしよう」など、見えないライバルに勝つさまざまな作戦が思い浮かぶはずです。しかし、実はこれは大きな落とし穴で、相手を出し抜こうとして勉強を始めても、なかなか受かりません。診断士試験の本質は、「自動車教習所」のようなもの。つまり、きちんとルールを守って運転できるかだけをチェックする試験なのです。

【試験の仕組みから考えてみる】

ではなぜ、「診断士試験=自動車教習所」と言えるのか。その理由を、試験の仕組みから検証していきます。

診断士試験は、診断士としての素養を十分に持っているかを確認するためのものです。ここで、いったん現行の試験制度を忘れ、「あなたが試験官として優秀な診断士を毎年800人選ばなければならないとしたら、どのようにされるか」を考えてみてください。個人の強みやコンサルティング能力をきちんと評価しようとするなら、それこそ中途社員採用のように職務経歴書で実績を確認し、詳細は面接等でヒアリングをして裏をとるでしょう。ただ、いかんせん、2万人もの診断士を面接していてはコストがかかりすぎ、公的資格故に、どんな経験・実績をもってスキルが高いとするのか、万人の納得できる基準作成が困難なため、この方法は採用できないわけです。

そういった理由から、現行の診断士試験は、上位800人のコンサルタントを選抜するものではなく、誰もが納得できる、「最低限の基礎的な知識やスキルを問う」方法で選んでいます。だから、試験に受かっても、みんながみんな優れた診断士というわけではありませんし、それぞれの強みや経験も違っているわけです。

最低限の能力を確認する試験で、高度なテクニックは要求されません。F1ドライバーだって、国内の公道を走るためには普通自動車免許が要るわけで、教習所で第1段階→第2段階と何十時間もかけ、教官に怒られながら進めていくのです。教習所でいきなりドリフト運転したり、時速200kmで走ったりしたら、免許なんてもらえません。彼らでさえ、何も来ない踏切の前で一時停止し、窓を開けて確認をしなければならないわけです。

【安全にコースを走る】

診断士試験は、普通の自動車教習所ではなく、南米・アマゾンの熱帯雨林あたりにある教習所だとイメージしてみてください。道はデコボコで、熱帯植物が生い茂り、見通しはあまりよくありません。そのうえ、スコールが降ると車は立ち往生してしまい、完走できない車もたくさんあります。こんな教習所だと、タフで長いコースを走り抜く体力と持久力は必要ですが、特別なドライビングテクニックは必要ありませんよね。

診断士試験もこれと一緒で、画期的なアドバイスは求められません。事例問題を解いていて、「こんな新しいアイデアがあるのになぁ」と思ったときは、「これは、合格してから出会うクライアントさんのためにとっておくものだ」と思ってみてください。

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